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次世代に期待を込めて

2014/08/07

学校の腰掛け以外、椅子を見たことのない少年が、中学を卒業と同時に、縁あって斎藤巳之三郎という椅子張りの親方の下に弟子入りしました。あれから60年余り、未だに椅子づくりに関わっています。
この60年間、椅子を取り巻く環境は、めまぐるしく、大きく変化してきました。

富戸港

 

1974(昭和49)年ころからの家具材料の変化は、新しいデザイン、それに伴う技術と道具の変化する時代でもありました。78年2月インターデコール、4月アルフレックス、6月利根森林(B&Bのライセンス生産をしていた会社)、84年大沢商会の倒産、それに伴い取引先であるわが社も、経済的なリスクに15年余り翻弄されました。

2000年代は、デフレスパイラルという得体のしれない怪物におびえた時代でした。仕事さえできれば何とかなると言う、単純な思考では成り立たなくなる事を感じた時代でもありました。それに対応しなければと自分に言い聞かせ、今日まで何とか切り抜けて来ました。モノを作るという現実的な楽しさと多くの人に支えられ、幸運にも一般的には得られない、多くの経験をさせて貰いました。

過去から未来へ、変化する価値観の橋渡しの一助として、私の経験を次世代に伝えたいと、いま強く思っています。1988年から雑誌「室内」(工作社)に、家具の材料や椅子にまつわる話を連載した時代がありました。当時の問題点、反省点も含め、改めて整理したいと考えています。

特に家具材としての木材の世界は、全く様相も変わり、当時の家具材の有りようが懐かしく、現状を思うとどこか心寂しい心持ちがします。坐り心地についても、相変わらず人間工学に寄りかかり、商売熱心で断定的な理論も聞きますが、確たるモノに出会った記憶がありません。90年代頃から、インテリア業界も環境に優しいモノつくりが、真剣に論じられるようになってきました。これからのモノつくりは、環境問題とどのように向き合うか、大切な課題になると考えています。答えはすぐに出ないことばかりです。けれども、考え続けていくことが大事だと思っています。